「“在る建築”をずっと豊かに」
“在る建築”とは
「在る」とは、物事がこの世に存在する、その場に存在する、生存している、などの意味があります。
その時代において、何らかの役割を担っていたからこそ「在る」わけであり、
人々の役に立ち、存在価値を見出されていたからこそ「在る」と考えることができます。
私たちがベースを置く上海という街は、アヘン戦争を経て、日本や欧米各国がそれぞれの租界(外国人居留地)を築いた1840年代の租界時代に始まります。諸外国の文化の影響を受け、独自の文化を築き上げた上海には、今もなお“在る建築”が点在しています。私たちが携わった「陕康里(Shankangli)」プロジェクトは、敷地内に租界時代に建てられたインド·シク教の教会建築および付帯施設がありました。かつて人々に親しまれた教会は、租界の終焉とともに機能を失い、近年は無秩序に増改築された建物や住居が乱立し、スラム化していました。そこで私たちは“在る建築”を活かしながら、サスティナビリティの向上へとつながるようなコンバージョンを計画し、「陕康里」はワークスタジオ×商業施設を融合した「クリエイティブビレッジ(創意園)」へと再生しました。
現在、中国は経済発展を遂げ、都市部においては高層ビルが立ち並ぶようになりました。一方、そのような風景とは対象的に、租界時代の歴史建造物や改革開放時代に作られた都市部の工場などの建築物、緑豊かな昔ながらの低層な町並みが再評価されています。私たちは“在る建築” を最大限に活かし、そこにサスティナビリティや機能性を付加することで新たな魅力を引き出し、豊かなライフスタイルを積極的に発信していきたいと考えています。
私たちが社会に提供できるソリューションは、今の時代に取り残され、必要とされなくなった“在る建築”に息吹を吹き込み、現代人のライフスタイルに寄り添いながら、「建築を改え、暮らしを変える」ことで人々の生活をこの先の未来もずっと豊かにしていく「再生」を探求し続けていくことだと考えています。
再生の過程 The Process of Renovation
再生「4つのコア・バリュー」
Four Core Values
1. 在る建築をずっと豊かに
人々が自然に集まるような、活力あふれる空間を創る:ユニークな商業空間、創造力を刺激するワークプレイスを提供する

2. 場の魅力を再認識し、価値を最大限に高める
その建物・空間の歴史的文脈や意図を読み解き、既存の建築を可能な限り再生・活用し、
人と地域のつながりや地域づくりに役立つライフスタイルを提案する

3. 地球に、環境にやさしく
躯体や素材の再利用を最大化し(古いレンガや瓦を剥がして外壁に利用するなど)、二酸化炭素の排出量を抑える。
太陽光パネルや中水を利用し、断熱性や気密性を高め、自然エネルギーを最大限に利用したパッシブデザインを採用する

4. 開発コストを削減する
可能な限りの資源を再利用し、コストを2~3割削減する。
既存の構造を最大限利用(撤去部分の最小化と構造補強の組み合わせ)し、スクラップアンドビルドを可能な限り抑制する
